「日本の武道の一つ 弓道」 ゲストスピーカー 久德 健三 氏 (森本 良嗣 会員 ご紹介)
射法とは、弓を引く初めの一歩
●弓矢で射を行う場合の射術の基本ルール(射法八節) 射法の一連動作
8つの動作は区分されていますが、終始関連して一つの流れを作り、動作と動作の間が分離・断絶してはなりません。
一射を一本の竹に例えると、竹に8つの節(ふし)があるのと同じこと。つまり、8つの節は相互に関連する一本の竹でありながら、一節(ひとふし)ごとに異なった8つの節であることを意識することが大切なのです。
●世界の弓、日本の弓:旧石器時代末期から
手の届かない所を走る、あるいは飛ぶ動物を捕らえて食べるための知惠の形として、世界中で弓は誕生し、旧石器時代末期には中近東アジア地方の民族により使用されていました。日本でも、石器時代末の製作といわれる銅鐸に描かれた狩猟の絵に、下部に「握り」がある長弓が発見されています。これは、弥生式土器を使った時代と推定され、黒塗りの丸木弓の長弓に樺で隔巻をしてありました。日本人が長弓を使っていたことは、中国の魏志倭人伝(3世紀前半)にも記録があります。古事記などの思想的、文化的な視点から、弓矢が威儀を示す行装として重い位置を占めていたと考えられ、後に宮中や武家の行事に弓矢の儀式が重視されるようになる要因ともいえるでしょう。
●一人でも楽しめる「弓道」
弓道は他の競技と多少異なり、「人」でなく、「的」を相手にする武道・スポーツです。そこには、一人でも楽しむことができる世界が広がっています。素朴で親しみやすいので、少年少女からご年配の方まで年齢や男女の制限はありません。それぞれが自分の体力に応じた強さの弓を使い、練習を始めることができます。晴雨にかかわらず、練習時間も道場の環境に合わせて調整することが可能です。
●「的」は 静止して動きません。
その「的」に当たるか外れるかだけでなく、射行(しゃぎょう:弓を射ること)として成功か失敗か、一本一本を味わいながら楽しめるので、興味は深まっていくのです。
●弓を引く動作は「射法八節」という、八つの節に分けられます。
1つひとつを正しく組み立てることになっていますが、それは別々の動きではありません。この八節を始めから終わりまで一連の動作で、一貫した流れのように、正確に行うことによって的中率は高くなるのです。
●弓道の弓には照準機がついていません。
自分の体感だけを頼りにするので、周囲の状況や対戦相手の的中などに影響されたり、ちょっとした心の動揺で射術が狂ったりすることもあります。そのために、射法の基本動作を確実にし、密度の高い練習を日々重ねて的中率を高めることはもちろんですが、物事に動じない「不動心」を養い、淡々とした「平常心」で行射できるように、心の修練を重ねることが大切です。
●正しい射行は、正しい姿勢から。
背骨を伸ばし、胸郭を広げて左右の均衡を図り、気力を丹田(ヘソの下にあり、気力が集まる場所)に収め、精神の集中を持続する。そこから正確な的中が生まれます。「自分」「弓」「的」の三者が一体となった瞬間、果断に射放ちます。的中しない場合、すべての原因は自分にあるので、答えを求め、自己を見つめます。その繰り返しが、精神の修練に大きくプラスとなることも、弓道が愛され続ける魅力のひとつです。