「民法改正について」 中井 周治 会員
明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の規定(契約等)について約120年間ほとんど改正なし。
社会・経済は大きく変化(取引の複雑高度化、高齢化、情報社会の進展等)
多数の判例や解釈論が実務に定着(基本的ルールが見えない状況)
平成21年10月から5年余りの審議を経て、法制審議会民法(債権関係)部会において要綱案を決定
「社会・経済の変化への対応」の観点からの改正検討項目
・消滅時効
業種ごとに異なる短期の時効を廃止し、原則として「知った時から5年」にシンプルに統一 ⇒ 事項期間の判断を容易化
・法定利率
法定利率を現行の年5%から年3%に引き下げた上、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入
⇒ 法定利率についての不公平感の是正
・保証
事業用の融資について、経営者以外の保証人については公証人による意思確認手続きを新設
⇒ 安易に保証人となることによる被害の発生防止
・約款
定型約款を契約内容とする旨の表示があれば個別の条項に合意したものとみなすが、信義則(民法1条2項)に反して相手方の
利益を一方的に害する条項は無効と明記。 定型約款の一方的変更の要件を整備 ⇒ 取引の安定化・円滑化
「国民一般に分かりやすい民法」とする観点からの改正検討項目
・意思能力 意思能力(判断能力)を有しないでした法律行為は無効であることを明記
・将来債権の譲渡 将来債権の譲渡(担保設定)が可能であることを明記
・賃貸借契約 賃貸借終了時の敷金返還や原状回復に関する基本的なルールを明記
関係団体からの要望
・改正内容の周知徹底
関係者の実情に応じた効果的な周知
(様々な媒体による国民への周知・担当者による説明会を全国で実施・関係省庁と連携した業界団体への周知)
十分な準備期間の確保
・施行日を「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とする
成立までの経緯
平成27年2月10日 法制審議会民法(債権関係)部会 要綱案決定
2月24日 法制審議会総会 要綱決定(全会一致)
3月31日 閣議決定・法案提出
平成29年5月26日 成立
6月 2日 公布