■会長の時間
皆様 こんにちわ。
先週、集団的自衛権について、学者が3人とも違憲といったことに関連して、私が、弁護士として活動するに際し学説など重要視しないことを述べました。 これに関連して、学者の見解が効果があった例外的事案について、エピソートを1つ述べたいと思います。。
私が、現在進行形で7年かかわっているもので、営業秘密侵害を認めたアメリカの欠席判決の日本での執行要件が争われている事件があります。アメリカの判決は、アメリカを不法行為地として管轄を認め、内容的にも不法行為を理由として損害賠償等を認めています。私は被告側です。
相手方は、ほぼ無条件で認めるべきとの立場でした。相手方と同じ結論を出したものが下級審判例も2例ありました。しかし、間接管轄全般については最高裁平成10年判決があり、「日本の司法権の立場から、外国に管轄があると積極的に認められなければないない。」としており、この無条件説は誤っています。
当該アメリカ判決はアメリカを不法行為地であると認めて自らの管轄を肯定し、実体的にも不法行為の成立を認めて判決しています。管轄の理由と実体的請求の理由が同じ場合に、裁判所は、どこまで内容(不法行為の有無)に立ち入れるかという難しい問題です。
最高裁平成10年判決の基準からすると、アメリカの裁判所に管轄があることを積極的に判断しなければならないのですから、本来、不法行為の有無についてもわが国の裁判所が判断しなければならないはずです。ところが、民事執行法24条2項は、執行判決は外国裁判の内容を調査しないでしなければならないと規定しています。そうでなければ、わが国の裁判所が判断をやり直すこととなり、外国判決の効力を全く否定することになるからです。
私は、直接管轄(日本で外国にいる者を被告として裁判する要件)に関する最高裁平成13年判決と同様、原告は、不法行為の客観的事実関係(故意・過失、違法性を除いた、①原告の侵害利益、②被侵害利益に対する被告の行為、③損害の発生、④②と③の事実的因果関係)は立証しなければならないとの結論となりました。これは、最高裁平成10年判決の論旨と民事執行法24条2項の規定からの帰結でした。しかし、これは、誰も言っていないことで、当時の文献は、むしろ、最高裁は直接管轄と間接管轄を別の基準でみているとのものが支配的でした。
私は、自説で準備書面を書いた後、裁判官と1対1で、裁判官がどう考えているか直談判しましたが、裁判官も難しい問題で、結論がでていないとのことでした。
当時所属していた勉強会で議論して貰いました。結論は、私の見解でよいが、相手が京大教授の意見書を出している以上、意見書は出した方がよいとのことになりました。私は、学説を重視しませんから、乗り気ではなかったのですが、まともな裁判例がなかったのでこの意見に従いました。
そして、紹介されたのが、高橋宏志教授でした。私が学生時代に読んでいた新堂教授の弟子との話で、又、東大名誉教授ですから民事訴訟法の第一人者と評価されていることは想像できました。
高橋教授は、私の文章を読んで納得して下さり、意見書を書いてくれることになりました。
高橋教授の意見書は、結論として、「間接管轄においても、不法行為の客観的事実の証明が必要だと解する。」との結論でした。私は、学界の定説(争いのない説)だとの結論にして欲しいと言いました。私としては、一学者の見解など裁判所も重要視しないとの思いがあったからです。
高橋教授は、「誰も明確には言っていないから、」と困った顔をされましたが、結局、「このように間接管轄についても不法行為の客観的事実関係の立証が必要だというのは、学者間の討議では当然の前提としており、一般的見解であると思料する。」との意見書を書いてくれました。
後で判ったことですが、高橋教授は、当時、法務省法制審議会国際裁判管轄部会の部会長の職にありました。国際裁判管轄の第一人者ということになります。これは強かったです。東京地裁は、安心して私の見解に従って判決を書いてくれました。
【来客紹介】 |
2名 |
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【出席報告】 |
27年6月12日(第635回例会) |
会員総数 |
出席免除会員 |
出席会員 |
欠席会員 |
出席率 |
34名 |
1名 |
25名 |
8名 |
75.76% |
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【幹事報告】
〔メールBOXに配布〕
1)第12回理事会・第3回次年度準備理事会報告 2)次年度理事・役員・委員会構成表
3)次年度年間プログラム 4)会員名簿の確認のお願い(6/26まで)
〔回覧資料〕
1)他クラブより例会変更のお知らせ(大阪なにわRC・守口イブニングRC・箕面RC)