■会長の時間
【邯鄲の夢】
むかし、中国の邯鄲の旅籠屋で、呂翁という道士が休んでいた。そこに盧生という貧乏な若者が通りかかり話しかけた。そして、しきりに現在の不幸を歎き、さんざん不幸を訴えた。やがて眠くなった盧生は、呂翁からひとつの枕を借りて寝た。その枕は陶器でできていて、両端に孔があいている。盧生が眠っているうちに、その孔がどんどん大きくなったので、盧生が入ってみると、そこには大きな立派な家があった。
盧生は、その家に住むようになる。名家の娘と結婚して進士の試験にも合格して官吏となる。それからとんとん拍子に出世していく。宰相となり、十年間、よく天子を補佐して善政を行い、賢相のほまれを高くした。位人臣をきわめ得意の絶頂期がつづく。が、ある日突然、無実の罪によって捕えられ、謀叛をたくらむ逆賊として死罪を宣告されてしまう。
盧生は「出身地の田舎には、わずかばかりだけれどもよい田んぼがあった。欲を出さずに百姓をしていれば、ぜいたくなくらしはできないにしても、こんなことにはならなかったのに、どうして出世したいなどと考えたのだろう。むかし、邯鄲の道を都へのぼろうと、ぼろを着て歩いていたころがなつかしい。でも、これでもうおしまいだ」と歎き、悲しみ、自殺をはかろうとする。が、妻におしとどめられてしまう。ところが、逆賊として捕らえられた仲間がみんな殺されたのに、盧生だけが宦官のはからいで死罪をまぬかれて、遠隔の地へと流される。数年ののち、盧生の無実であることがわかり、許されて再び陽のあたる場所に出て天子の信を得て働くようになる。
五人の子どもたちも、それぞれ出世して、天下の名家と縁組をする。盧生は、十数人の孫にかこまれて幸せな晩年をすごす。しだいに健康がおもわしくなくなり、病の床に伏すと、見舞客が絶えず、天子からは名医や良薬が贈られた。しかし、年齢には勝てずとうとう、大勢の人々に惜しまれながら、まことに見事な一生の幕を閉じた。
大きなあくびをひとつして、盧生はめざめる。と、まだあの邯鄲の旅籠屋ではないか。呂翁もそばにいる。旅籠屋の主人は、盧生が寝る前に、黄粱を蒸していたのだが、その黄粱さえもまだできあがっていなかった。すべてはもとのままだった。長いと思った一生は、ごく短い間の出来事にすぎなかった。盧生は人生のすべてを経験した。もう欲を出さずに、田舎へ帰ろうと決心して去っていく。
「邯鄲の夢」とは、人生の栄枯盛衰は、邯鄲の夢のようにはかないものだという場合に使うことばである。「一炊の夢」「黄粱の夢」ということばも同じ意味で使われる。
【来客紹介】 |
1名 |
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【出席報告】 |
25年7月19日(第553回例会) |
会員総数 |
出席免除会員 |
出席会員 |
欠席会員 |
出席率 |
32名 |
2名 |
24名 |
6名 |
80% |
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