「ロータリーの綱領」 と 「ロータリーの目的」 について 横山 守雄 パストガバナー
本日、私は「ロータリ-の綱領」と「ロ-タリ-の目的」についてと云う演題で、少々堅苦しいお話しをさせて頂きますが、このロータリ-定款第4条には、ロータリー活動のエッセンスが込められております。
なぜ私が、本件を、本日の卓話の題材に取り上げたかと申しますと、現在の「綱領」と云うタイトルで翻訳されている「クラブ定款第4条」は、新入会員や一般社会の人々にとっては、些か難解である、即ち、分かり難くいと言われているからであります。現行「綱領」の主文と、第1条から第4条までの条文は、実は半世紀以前に翻訳されたもので、現代社会にマッチしない訳文になっているのではないかと云う意見がこれまでも多々ありました。
そこで、2008-09年度の日本ガバナー会において現行の翻訳にはどの様な問題点があり、それらをどの様に変えたら、適訳となるだろうかと云う事になり、ガバナ-会の傘下に「綱領等翻訳問題調査研究委員会」 なるものを立上げました。そして全国から選ばれた7名のパストガバナーがその調査・研究の任務にあたる事になりました。
ところで、組織体としてのロ-タリークラブには、二つの法的な取り決めがあります。その一つは「クラブ定款」ですが、クラブ定款は国際ロ-タリ-に加盟している世界の34000余りの全クラブが一様に、また絶対的に遵守しなければならないロータリークラブの基本的なルールが、この定款に込められております。
もう一つは「クラブ細則」です。クラブ細則は、それぞれのクラブが置かれた状況が各地域によって異なりますので、その細則規定は世界共通の「クラブ定款」で定められている基本的なルールを逸脱しない範囲内であれば各クラブの裁量で取り決めることが出来ると云うことになっています。私達ロ-タリアンがクラブ会員になる際には世界共通の「クラブ定款」と、各クラブが独自に定めた「クラブ細則」の両方について、全ての条文・条項を受諾しますと云う前提で入会が認められています。
その世界共通の 「クラブ定款」の第4条として規定されているのが「ロータリ-の綱領」です。ところが、RIの規定では、「ロータリーの文書は全て、英文を公式用語とする」と定められており、その英文をベ-スにフランス語、ドイツ語、スペイン語、日本語などの主要な外国語へ翻訳されています。そこで、日本のロ-タリアンにとって問題になりました事は、RIの公式英文と、それが日本語に翻訳された場合の和訳文の間に、解釈上、幾分かのブレがあると云う点でした。
「ロ-タリ-の綱領」の英文の正式な原型は「The Object of Rotary」です。その「The Object of Rotary」の英文そのものは時代の変遷に伴って内容がかなり変わって行きました。その事を先ずお話しますと、1905年ロ-タリ-クラブの第一号店、シカゴRCが誕生した後の1906年に定められた「The Object of Rotary」は2項目だけでした。 最初のシカゴ・ロ-タリ-クラブは会員間の商取引によって「会員自身の事業利益の拡大」を図ることを唯一の目的として設立され、そしてその為に必要な、「会員間の親睦」を第2項として付け加えております。
ですから、最初のロータリークラブが発足した当時は今日の様な職業奉仕、社会奉仕、国際奉仕、そして、最近導入された新世代奉仕、と云ったような「奉仕活動の概念」は全くなかったわけです。しかしながら、1910年代になると会員間の「ビジネス上の相互扶助の理念」だけではクラブの発展に限界があるという意見が数多く出てくるようになり、いろいろな奉仕活動の概念が徐々に芽生えて参りました。そして、その後は幾多の論争や各クラブでの実際のクラブ活動を踏まえて、ロータリアン自身の職業倫理の高揚を目的とした職業奉仕や、地域社会の為に役立つ社会奉仕などがロータリー活動の重要な活動目的となりました。
現在の「Object of Rotary」の公式英文は1950年に定められたものですが、それから既に62年が経過しております。この62年前の公式英文は、現在の世界情勢に合わないのではと云う意見も出ておりますが、公式英文の内容の変更はその後もなされておりません。英文のクラブ定款の変更を行う場合は、規定審議会の審議手続きを経て、公式に採択されなければなりません。規定審議会は3年置きに世界の各地区より代表者1名と、国際ロータリーの役員が一同に集結して、「ロータリーの立法機関」として機能しておりますが、次の規定審議会は今年の4月にシカゴで開かれる事になっております。当地区からは、岩田PDGが地区代表として参加されます。
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次に本題の「The Object of Rotary」の日本語訳ですが、これまでは「ロータリーの綱領」と訳されておりました。
しかしながら、「Object」と云う英単語は、皆さんがどの英和辞典をご覧になっても、「綱領」と云う和訳語はありません。「Object」の適訳は、「目的」です。「The Object of Rotary」は「ロータリーの目的」が適訳です。
日本のロータリーが戦後RIに復帰した翌年の1950年に「The Object of Rotary」は、一旦日本語に翻訳されましたが、その後1960年に現在の日本語訳に改定されております。 しかしその改定作業に関する議事録が日本のRI事務局にも、どこにも残っていないそうです。その翻訳を担当された方は当時のお二人のRI理事とのことですが、その和訳文には実際にはいろいろな問題点があると、これまでも指摘されておりました。1950年から1960年の時代は、ロータリークラブの会員はごく限られた企業のトップリーダーや専門職の方で占められており「The Object of Rotary」の翻訳に当たっては、それなりの権威を持たせる為に「綱領」と命名されたのではないかと言われております。
現在の綱領は題目以外の主文及び第1条から第4条の文章についても、いろいろな翻訳上の問題点がありますので、現在の「ロータリーの綱領」の翻訳文の全てについて見直しを行い、同時に現在の時代にマッチするような “分かり易い” 「ロータリーの目的」、と云う翻訳文に変えて行こうという事に至った次第です。私は過去3年間、綱領の改定作業に関わって参りましたが、昨年末にその翻訳改定作業がやっと終わり、新バ-ジョンの和訳文が完成しました。ここに至るまで、日本の全クラブを対象にしたアンケート調査や、翻訳の専門家、或いはノンロータリアン第3者のご意見も聴取致しました。 そして最後の段階では日本のRI理事・諮問委員会と、RI本部の日本語・翻訳課の意見も拝聴して出来上がったのがこの新バ-ジョンです。
新しい「ロータリーの目的」という翻訳文は、間もなく開かれますRIの規定審議会で採択されます立法案と共に、今後のRIの「手続き要覧」に織り込まれることになっております。2014年版「手続き要欄」の日本語の改定版は今年の夏以降に、皆様のお手元に届くことになりますが、2014年の日本語版の「手続き要欄」の中の「クラブ定款第4条」は、これまでの「綱領」と云うタイトルが、「ロータリ-の目的」と云うタイトルへ変わります。ですから日本での出版物、例えば毎月「ロータリーの友」に掲載されております「ロータリーの綱領」は「ロータリーの目的」というタイトルで掲載されることになります。
新しい手続き要欄が皆様のクラブへ届きましたら、次年度のその時点で皆様の「クラブ定款」の変更が必要になります。 「ロータリーの目的」という新しい改訂版をご覧頂きますと、皆様は恐らく「綱領」そのものが、随分分かり易くなったなあと、感じられるかと思います。ここに至るまでには、各クラブ間、各ロータリアン、日本のRI理事諮問委員会、また担当委員会の委員の間でも、いろいろな論争が繰り返されて参りましたが、それでもロータリーでは最後は何となく纏まって行くものです。
皆様のクラブ内でも、活動が盛んになればなるほど会員間の意見は分かれることが結構あるのではないかと思います。そう云う時はいつも「寛容の精神」とい云うロータリーの創始者、ポールハリスさんのお言葉を思いだいして頂き、大らかなお気持ちで対応して頂きたいと思います。それがクラブの発展と、自分自身を高めて行く礎石になるのではないでしょうか。
以上