「抵当権と根抵当権について」 中井 周治 会員
抵当権と根抵当権の共通の性質
・優先弁済権
抵当債務者が弁済期が到来しても弁済しない場合には、抵当権者は抵当目的物から優先的に弁済を受けることができる。
・物権的請求権
物権的請求権とは、物権者に認められている物の支配を、他者が正当な権限なく侵害している場合、またはその危険がある
場合に、侵害やその危険の除去を求める権利です。
・附従性
抵当権は被担保債権とともに成立(成立における付従性)・存続し、債務者が債務を弁済した場合等、被担保債権が消滅す
れば抵当権も消滅する(消滅における付従性)という性質。
・随伴性
抵当権は被担保債権の移転に随伴するという性質。 また、抵当権の設定された目的物の所有権を第三者に譲渡した場合
は、抵当権付の所有権が移転することになる。 民法はこのような第三取得者との関係を考慮して代価弁済や抵当権消滅
請求といった制度を設けている。
・不可分性
抵当権者は、被担保債権の全部の弁済を受けるまで(一部の弁済を受けたとしても)、抵当目的物の全部について抵当権を
実行できる(留置権の不可分性の規定の準用、372条・296条)。
・物上代位性
抵当権の目的物が滅失した場合でも、それが債権などの形に転化していれば、それに対して抵当権が及ぶ(後述)。
先取特権の物上代位性の規定の準用(372条・304条)
質権の物上保証人の求償権の規定の準用(372条・351条)
※抵当権の性質 → ○ 附従性 ・ 随伴性 ・ 不可分性 ・ 物上代位性
※抵当権の性質(確定前) → ○ 不可分性 ・ 物上代位性 × 附従性 ・ 随伴性
※抵当権の性質(確定後) → ○ 附従性 ・ 随伴性 ・ 不可分性 ・ 物上代位性
確定前の根抵当権には随伴性がないため、被担保債権を根抵当権者が譲渡しても、譲受人が譲り受けた債権は根抵当権で担保されていない無担保の状態となる。
また、確定前の根抵当権の譲渡を受けた債権者は債権のない状態の根抵当権を譲り受けたことになる。