身近な法律問題 「離婚」 豊島 秀郎 会員
私は、離婚事件は、常に1件程度をもっています。離婚は、大きく分けると、協議離婚と裁判離婚に分かれます。協議離婚は、当事者が納得して届け出れば成立します。裁判離婚、調停離婚に際して、最終的に協議離婚届を提出して決着をつけることもありますが、それ以外は弁護士の仕事の範疇外となります。
裁判離婚は、民法770条に規定があり、1号が配偶者に不貞行為があったとき、2号が配偶者から悪意で遺棄されたとき、3号が配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、4号が配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、5号がその他婚姻を継続し難い重大な事情のあるとき、に限定して離婚請求が可能です。
このように裁判上の離婚原因は限定的ですが、ではその要件が十分立証出来ないと裁判上の離婚は無理かと言えば、そうでもありません。誰でも、他方配偶者から離婚の裁判を起こされると、そのような者と生活を一緒にすることは嫌ですから、離婚になることが多いです。その場合は、解決金の支払いで決着がつきます。私は、むろん、提訴の吟味はしますが、離婚の裁判を起こして、請求棄却で終わったことは一度もなく、すべて、離婚で決着しています。
裁判上の離婚では、①子の親権者、②財産分与、③養育費も決まります。
子の親権は、子が幼ければ母親に決まり、子の意思を尊重すべき年齢では子の意思が優先します。②財産分与は、共同形成財産を2分の1ずつに分けます。昨今は、夫名義で購入したマンションがローンオーバーになっていることも多いですが、その場合には、オーバーローンとともにマンションも夫の名義のままとなります。負債の分割は行われません。夫婦の一方が相続、贈与で得た資産は、その取得時期が婚姻の前後にかかわらず、その者の特有財産で、分与の対象とはなりません。妻が夫の母親から受けた贈与でも同様で、共同形成財産にはなりません。
養育費は、夫と妻の収入から、一定のルールの下に算出します。しかし、日本では夫が養育費を支払わない場合、強制執行はできますが(例えば、給料に対する差押)、差し押さえる財産がない場合、妻は泣き寝入りをせざるをえません。この点、西欧の多くの国では、警察がでていて、養育費の不払いは刑務所行きとなります。
離婚では、手続きは別になりますが、離れて暮らす親から監護親に対し、子との面会交流の請求がなされます。私が弁護士になりたての頃は子との面会交流の事件は少なかったのですが、最近はそのような状況下の離れた親は、この手続きをし、裁判所は原則として、これを認めます。この裁判所の面会を認める審判に監護親が応じないとき、離れた親は、間接強制の形で執行ができますが、監護親が徹底的に協力しない場合、面会を実施することには困難が伴います。 以上