「大阪の美術館」 龍岡 恵子 会員
大阪市立美術館
昭和11年(1936)、天王寺公園の一角に開館した美術館。もとは住友家の庭園つきの本邸だったが、美術館建設を目的に大阪市に寄贈された経緯がある。
館内は設立当初の本館と、後に新設した地下展覧会室と合わせて、地上3階・地下2階からなり、本館陳列室では特別展覧会や常設展示を開催している。
常設展示では、日本、中国の絵画・彫刻・工芸など約8000件を超える収蔵品と、社寺などから寄託された作品を随時陳列しており、なかには国宝や重要文化財に指定された作品も多い。
近年では、美術史ゼミナールや学芸員によるギャラリートーク、小中学生を対象にした専門家からの美術の実技指導も行っている。
大阪市立東洋陶磁美術館
世界的にも有名な東洋陶磁の宝庫「安宅コレクション」を住友グループ21社より寄贈され、1982年に大阪市が設立した美術館。
その後、在日韓国人の李秉昌(イ・ビョンチャン)氏から多くの韓国陶磁が寄贈され現在に至る。
国宝に指定されている油滴天目の茶碗、飛青磁の花生の2点と、青花蓮池魚藻文の壷や青磁の童女形水滴など重要文化財13点を含む約6000点の館蔵品は、東洋陶磁器のコレクションとしては世界一級のもの。自然採光を利用した展示室では、柔らかな太陽の光に包まれた美しい陶磁器を見ることができる。
国立国際美術館
2004年秋、中之島にリニューアルオープンした、現代美術を収集・展示する博物館。もともとは、1970年万国博覧会開催のときに建設された万国博美術館を利用し、30余年にわたって国内外の作品を収集・保管・展示を行っていたが、老朽化を機に現在の博物館がつくられた。一部の作家(セザンヌ、ピカソ、エルンスト、藤田嗣治、国吉康雄ら)のいくつかの作品以外は、戦後の現代美術作品を数多く収蔵。毎月、さまざまな展示会を開催したり、講演会、シンポジウム、ギャラリートークなども常時行っている。建物の外観は、竹の生命力と現代美術の発展・成長をイメージしてデザインされたもの。設計は、マンハッタンのバッテリーパークにある「ワールドファイナンシャルセンターとウィンターガーデン」などを手がけた、アルゼンチン生まれのシーザー・ペリ氏。地下1階は入場無料のフリースペースになっており、多くの人で賑わう。