「日本の職業奉仕について」 2660地区職業奉仕副委員長 山崎 修一 氏
「日本の職業奉仕について」という題をいただきました。「超我の奉仕」「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」「四つのテスト」など,「ロータリーの樹」の根の部分が、日本の昔からある「人づくり」の基本的な考え方、特に「甲斐(かい)」「情(なさけ)」「志(こころざし)の三つとどのように結びつくのか、考えてみたいと思います。まず「甲斐」です。「やりがい」「生きがい」「働きがい」「頑張った甲斐があった」「不甲斐ない」などと日本語で使われますが、これが職業奉仕と結びつきます。健康、家庭、職場などを大事にしながら、目標や理想など目指すところに向かって継続努力するところに「甲斐」があります。しかし、最も大事な点は、単に自分が目標を実現するだけでなく、周りの人たちがそのことによって認めてくれる、喜んでくれることでしょう。ここに「超我の奉仕」の基本があります。
さらにその点を掘り下げると「情」に繋がります。まず、相手の立場に立って考えること、相手の気持ちがわかることがスタートです。そして、その相手の立場から自分を厳しく眺めることが要求されます。この厳しく眺める基準が「四つのテスト」です。一方で「情けは人の為ならず」ということわざは、「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」と本質は同じところにあります。
では、三つ目の「志」について考えてみましょう。ここには5つの視点があります。
第一に、組織は一人ひとりにとっての成長の舞台、自分の力を最大限に発揮する舞台だ, という捉え方です。ロータリーという組織も、明らかに成長の舞台、人づくりの場です。
第二に、そこでいう成長とは、変化の一つ,「変化こそ生命(いのち)」だという点です。皆さんの目の前のグラスを思い切り床にバンとたたきつけると、粉々に割れます。形が変化しました。しかし、グラスには生命はない、では生命って何だろう、それは、自分の意思で変化するということではないでしょうか。グラスは残念ながら他の力でしか変化できない、だから生命を宿していないのです。一方で、草花は、自ら水分や養分を吸い摂り、光合成をして変化していきます。だから生命です。
第三は、その変化や成長の方向です。日本国憲法第22条には職業選択の自由が謳われています。私も税理士という職業を選択しました。ところが30歳で独立したときに、いくらその仕事をしたくても仕事ができませんでした。全く申告書が書けなかったのです。
申告書を書いてくださいというお客様がいなかった、ゼロからのスタートだったからです。人が仕事を選ぶのは当然のこととして、実は仕事が人を選ぶのだということを心の底から悟りました。言い換えると、常に仕事から選ばれる存在になるように変化、成長していかなければならない、「変化こそ生命」の方向は、「人が仕事を選び、仕事が人を選ぶ」というところにつながっていくと思うのです。
そうすると第四に、仕事から選ばれる存在になるにはどうすればいいかということがポイントになってきます。これこそ正解はないように感じます。しかし、ただ1つだけ言えることは、これからの時代は他の人と同じことをしていたのでは、「あなたにお願いします」と言って選んでいただけないだろうということです。「自分らしさ」が大事なのです。
そして第五に、こういう「自分らしさ」を鍛え上げていくには、時間的な自己投資をすべきだという点です。「毎日1時間、1カ月で30時間、そんな大きな差じゃない。だけど、1年がたつとやっている人とそうでない人とで360時間の差になってくる。そうなると1日10時間ずつ追いつこうと思っても36日かかる差になる。それが5年、10年したら圧倒的な差になってもう取り返しはつかないだろう。日々の積み重ね、1時間1時間の自己投資の積み重ねがものを言うよ。」と、ある人に教えてもらいました。
例会は毎日ではなく、毎週ですが、その1時間の例会の積み重ねが人づくりの原点なのです。