「臓器移植法施行20周年を迎えて」 ゲストスピーカー 川瀬 喬 氏 (森本 良嗣 会員 ご紹介)
今回は、折角、臓器移植について話すよい機会を与えて頂いたのに、時間足らずで小生の説明が不十分となり、ご出席された方々に質問の時間もなく、大変ご迷惑をお掛けしました。お詫びします。
本年は臓器移植法制定から20年目の節目の年になります。 この法整備によって我が国では長らく閉ざされていた脳死からの臓器移植が可能となり、2010年には同法が改正され、本人の意思が不明な場合には家族の承諾で臓器移植が可能となりました。
その結果、15歳以下の小児の脳死下での提供も実現し、ここ数年の臓器提供は年間50例を超える様になりました。
しかし、現実を見ますと移植待機者は13,400人(本年4月末現在)に比べ、死後の臓器提供者数(年間)が約100人(2016年実績では、脳死が64例、心停止後32例)、移植者数338人とは大きな隔たりがあります。 現状では、腎臓移植で17年、心臓移植で3年以上の長期の待機が必要となっています。
また、18才未満の小児からの脳死下の提供は今まで僅か18例で海外移植に頼らざるを得ない状況が続いています。
この様に、脳死下の臓器提供が伸び悩んでいる背景には、専門家によると、法律が改正されても臓器提供施設での種々の課題が改善されないままであることが指摘されています。
また、2013年の内閣府による一般市民の意識調査によると、自分が脳死になったら臓器提供を望む人が43%いて、本人の提供の意思がある場合には87%の方がその意思を尊重します、としているにも関わらず、臓器提供件数が増えないことについて、富山大学小児科の種市尋宙(たねいちひろみち)先生は、昨年秋の講演(兵庫県主催、いのちの授業)で「日本人は世界から見ると変わった考え方でしょうか?日本人はエゴイストなのでしょうか?と話され、日本人は死を忌み嫌い、語ろうとしないことがこの様な矛盾した行為、結果を招いているのではないか・・・。決して臓器提供に対して否定的な意見が多い訳ではない。ただ、命を取り巻く情報を知らないだけではないのか?」と述べられていたのが印象的でした。
提供件数が増えない理由の一つとして、行政、日本臓器移植ネットワーク、医療機関など社会のシステムに何らかの問題を抱えているからであり、それぞれの組織が十分に機能しているのか、現在、夫々の組織の在り方も問われているのも確かです。
この様な状況下、私たちの兵庫県では、移植医療の更なる発展のために、移植に関する各組織の連携と情報・活動の共有化、効率化を図ることが必須と考え、移植医療の関係機関・団体によるネットワークの構築を図ろうとの機運が高まっています。