「ぼんやり日本人考」 小田 清一 会員
日本人としての誇りと愛国心
我々、日本人の何気ない習慣、信条、、感性など他国と少し変わった特徴がぼんやりと見えます。最近ではトランプ大統領の民族差別、宗教差別的な発言に対し欧米など世界40ヶ国余りがデモ行進し抗議したが日本では大使館前で数名が集まった程度でした。
お隣の韓国では大統領の弾劾に向けて数十万人規模の集会が毎週行われ深夜までデモ行進が続きました。
この様なニュースを見ていると、どうも日本人は他国と比べると政治に無頓着の様に感じます。
因みに英国BBCの世論調査で最も高く評価された国は我が日本であり、海外に於いても日本の文化、日本人の気質、日本製の品質いずれも明らかに高く評価されており世界に良い影響を与える国として認知されています。
所が変な意識調査の結果を見つけました。何と自国に対する誇りの強さが最も高いのはオーストラリア人、最も低いのは日本人なのです。又、もしも戦争になった場合自国の為に戦うか?の問いに対する回答は最下位の15%です。平和で治安がよく物資が豊富なのが当たり前であり、俗にいう平和ボケなのかも知れませんがデータから見ると我々日本人は自国に対する愛国心、誇りが希薄であるをいう結果となっています。
余りにも釈然としないので、ぼんやりと日本人についての考え方を私なりにまとめました。
日本は間違いなく安全で治安が良く、夜中に女性の一人歩きが出来る国であり当然ながら犯罪件数は他国と比べ圧倒的に低く保たれています。和食は言うまでもなく世界各国で大好評を得ているし日本のアニメはフランスはじめヨーロッパ、アジア諸国で大人気です。そして日本人は規則正しくキチンと並び、時間にも正確無比です。
電車の運行を見ても一目瞭然で、「3分遅れです」とアナウンスする国は日本以外に無いそうです。
礼儀正しく、年寄りを敬い、優しく親切な国民性を持ち、日頃当たり前のようにお蔭様とか、お世話様ですと何気なく挨拶しますが、その中に感謝の念が含まれています。食事についても海外でも食前には頂きますと言いますが、食後にご馳走様と感謝を伝えるのは稀のようです。このように幾つも優れた点が有るのだが、中でも世界を最も驚嘆させたのは阪神大震災、東日本大震災の時に被災地では皆が互いに協力して、礼節を重んじて助け合う姿です。米国ニューオリンズのハリケーン、中国四川省の大震災では地域住民が暴徒化し、略奪、暴動により治安が悪化し水、食糧、ガソリンを奪い合い一般市民が殺人事件にまで誘発する国とは雲泥の差です。
この国を愛する想い、日本人の持つ精神文化は世界に誇れるものと何故思えないのか不思議です。
日本人の国民性
我々日本人は「農耕民族であったから」、「島国であったから」、「一神教でなく多神教だから」などの影響で独特の日本文化、国民性を形成したと言われます。確かに農耕民族は狩猟民族と異なり食糧の長期保存が可能な事から富の分配を統治する村社会が成立した事実は大きい。
勿論、島国である事は他国から侵略されにくい大きな利点だが大航海時代以降アジアのほぼ全域が欧米列国に植民地化された中で日本は独立を維持した。鎖国政策を経て脱亜入欧に至る幕末から明治維新の先人達の英知は途方もなく大きく計り知れない。
又、一神教と多神教の違いは勿論大きく影響するが司馬遼太郎氏は日本人は「無思想の思想」であると言います。
つまり無思想という大きなフライパンに色々な思想を入れて日本風にアレンジするようなものです。我々、日本人はクリスマスを祝い、寺で煩悩を祓い、神社に初詣する「何でもアリ」で極めて宗教感に乏しい国民だと思われがちだが、キリスト教でも仏教でも海外から伝わった宗教思想を日本流に熟成させているのであって、その背景に日本流のおおらかな仏教感、神道の思想がキチンと身体に沁みついている事を理解すべきです。
聖徳太子による仏教信仰と共に四つ足を食べなかった日本人が明治以降は平気で食べるようになった。何年か前にインドネシアのイスラム教徒が味の素に豚肉の成分が混入していると大問題になったが、日本人には問題意識すらなく実感が伴わない。原理主義はむしろ排除する傾向にあり宗教感も思想もベストよりもベターを好む傾向にあります。その意味で現在世界から注視されているIS国と対極の存在が日本だと思います。
同じ仏教国でもタイなど東南アジア諸国は小乗思想的で羅漢を目指しますが、大乗思想的な日本仏教は固有のものであり彼等とは大きく異なり全く意に介していないのが実情である。故に、日本流の宗教感、思想はおおらかであっても優柔不断ではありません。
余り語られないのですが「ひらかな」の発見が日本人に与えた精神文化への影響は大きいと言われます。「ほのかなともし灯」、「うらわかき乙女」など外国語でキチンと翻訳できるのでしょうか?ひらかなによる緻密な感覚を見事に表現することが可能となり、文学、文芸、各種の教育など日本文化が開花する元になり、やがて侘/寂など幽玄の美意識が定着化し更に感性豊かな国民となったものと考えます。
因みに今はやりの俳句・生け花は日本人しか理解できないものであり、外国人には通じない感性が秘められています。
この様な感性により明治維新から30年を経て世界の軍事大国となり、太平洋戦争後30年を経て経済大国となったのは、決して奇跡でなく「心豊で且つしなやか」な国民性の持つ必然だと自分なりに結論付けます。