「老舗企業と日本の長寿企業について」 ゲストスピーカー 稲場 義昭 氏 (大屋準一会員ご紹介)
■ 日本に長寿企業が多く存在する理由
1、日本の風土
・海に囲まれた島国で異民族の侵入を受ける危険が少なかった。
・温暖で雨の多い気候は、米作を可能にし、狭い国土の割には多くの人口を養うことを可能にした。
2、日本人の思想や宗教が共存共栄を目指す考え方であった。
・最も象徴的なこととしては、世界で最も長い歴史を持っている天皇家の存在。
・神、儒、仏 の平和的共存の中で生きてきた。
3、日本人の独特なビジネス観・企業観
・ビジネスの目的が単なる金儲けだけでなく、社会的な意義があると考えてきた。
・お金より大切なことは、自分がいかに充実した職場人生をそこで送れるかということを考えている。
■ 企業永続の8つの法則
1、明確な使命やビジョンをもっている。
・事業の目的は何なのか、自社の失ってはならない強みはなになのか、経営者あるいは事業を継ぐ人として心掛けるべきはなに
なのか、このことについて明快な指針があり、実践がある。
2、事業を長期的視点にたって経営する
・長期的繁栄を目指す。その証拠である暖簾を守ることを最優先するのである。企業信用の表すものとなり、これを汚すこと、即ち
ブランドに傷をつけることが最もしてはいけないこと。
3、人間経営、人材重視
・従業員は部品ではなく、成長する主体、従って企業内教育に熱心、長期的視点から人材の見極め、登用が行われていた。
4、顧客志向の徹底
・企業の大小を問わず、顧客の存在があって初めて成立し、持続する。おろそかにしない。
5、社会性というべきこと
・携わるビジネスが社会から非難されることがないという当り前のことではない。より積極的に事業を通じて公へ貢献してゆくと
いう姿勢が基本となっている。
6、革新を目指す
・変化を恐れず絶えざる革新を目指す姿勢である。過去の成功体験からの脱皮、社会の変化、顧客のニーズの変化に合わせて
変えていくもの。
7、質素・倹約の勧め
・事業に不可欠な正直で誠実な組織風土を形成するのに大いに役立つという。
8、価値観を伝承する努力
・長寿企業では様々な機会、手続き、儀式などがあり、このような場を通じて、事業が伝えてきた価値観、創業者やファミリーの
記憶、困難な時代を手を携えて生きてきた従業員との絆など、後代に伝えていくことに努めている。
【要約すれば】
「長寿企業の法則」はその生きる目的・ミッションを明確にし、適度な競争条件と社会の変化へ適応する能力を持ち、ステイクホル
ダーを重視して、「企業も社会の一員である、社会とともに生き、社会に生かされているのだ」という気持ちで、長期的に自らの能力
を高める努力を続け、かつ質実に世を渡っていくということである。 (参考) 舟橋晴雄「新日本永代蔵-企業永続の法則」