■会長の時間
山口瞳氏(1926~1995)に「勇気」をあたえてくれた人は、白樺派の作家・武者小路実篤である。
〈(実篤は)毎日のように書を書き、絵を描いたが、ついに書も絵も上達することがなかった〉
いまもたまに目にする彼の色紙の、ジャガイモやカボチャにはそれなりの味わいがあるものの、巧拙いずれかと問われれば、なるほど「拙」のほうに近い。
実篤が生涯に書いた色紙は数万枚とも、数十万枚ともいわれる。あまりに直筆の数が多すぎたせいだろう。ある出版社がカラー印刷して売り出した複写版のほうが、直筆の色紙よりも骨董品市場で高い値がついた、という奇妙な逸話も残る。実篤自身が徳川夢聲との対談で楽しげに明かしていることなので、事実なのだろう。
なぜ、野菜ばかり描いたのか。「キミ、人形は目なんか失敗すると、それでもう駄目じゃないか。野菜なら、どうにかなる」という言葉を聞けば、あまり上手でないことは本人も自覚していたようである。
努力したぶんだけの成果が上がらないと、焦りが生まれる。努力の末に成功した立志伝中の人物は尊敬できるにしても、そういう人物ばかりを我が人生のお手本にしていては焦りが募る一方である。努力しても上達しなかった実篤は「焦り封じ」のお守りになる。
【来客紹介】 |
18名 |
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【出席報告】 |
25年12月14日(第571回例会) |
会員総数 |
出席免除会員 |
出席会員 |
欠席会員 |
出席率 |
34名 |
2名 |
16名 |
16名 |
50% |
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