「東日本大震災に学ぶ事業継続計画(BCP)の考え方について」 花谷 尚嗣 会員
●事業継続計画(BCP)を策定するための考え方
一般的に、事業継続計画(BCP)といえば、大震災で壊滅的なダメージを受けた場合の、単なる事前の防災対策であるかのような印象で受けとめられている印象がありますが、事業継続計画は英表記のBusiness Continuity Plan を略したもので、自然災害や事故、感染症の流行、テロなどの会社の存在を脅かすリスクに直面した時の備えとして、損害を最少限に抑えながら「事業を守る」手段をあらかじめ決めてプランを作成しておくものです。
そのプランの内容に要求される範囲は、たとえば、建物の耐震工事、ITシステムの二重化、代替設備の確保など幅広いものになります。また、一方では「命を守る」ための消防計画や防災マニュアルを作成して、そこには、たとえば避難場所の決定などの「決めごと」を主とした内容のものを網羅して整理してあります。これらの「決めごと」もBCPに含めてあります。
東日本大震災の後、こうした考え方の「事業継続計画」が、かなり多くの企業でも策定されるようになってきました。株主総会でも、株主からBCPの導入について積極的な意見が述べられるケースも増えていると聞いています。
BCPは、単なる防災対策ではなく、企業として材料や部品、完成品などの供給を問われる仕組みで、この中には、事業継続を実現させるための数々の策定プランも織り込まれています。
その策定にあたっては、最初にそれぞれの業種・業態によりさまざまな被害状況を想定しますが、基本的には、以下のように「7(+α)」の被害シナリオと、リスク対策として「5つ」のポイントが上げられていますのでご参考になさってください。
■7(+α)の被害想定
(1)大切な業務用資産が使用できない
(2)大切なデータや文書資産を失う
(3)社員が帰社、出社できない
(4)停電が続く
(5)電話やネットワークがつながらない
(6)商品・原材料・サービスを調達できない
(7)建物に入れない
(8)(プラスα)・・・各業種・業務の固有の被害想定を追加
■リスク対策の「5つ」のポイント
①人員の確保
②コミュニケーション手段の確保
③事業拠点・施設・備品の確保
④情報資産の遠隔保管
⑤遅延回復と迅速な供給再開