「商標の変遷」 福島 三雄 会員
商標は、企業が提供する商品やサービスとともに使用されることにより、企業の信用が化体する機能を有していることから、これを商標権として保護しています。商標権は、登録によって10年間の独占使用権を有し、国内全域において他人の使用を排除し、かつ、更新をすることにより永久の権利ともなり得るものです。
商号は、登記時には類似商号のチェックがありませんが、商号も商品やサービスの取引の標識として使用される場合には商標として機能します。このため、商号の全部あるいは一部を商標権として登録することも増えています。
日本では、商標の保護は、明治17年6月7日の商標条例の公布に始まり、今年130周年を迎えます。登録の第壱号は、膏薬の図形商標で、京都の平井祐喜氏が登録しています。特許の専売特許条例は明治18年の公布ですので、特許より1年早く制定されたことになります。その後、明治32年商標法が制定され、大正10年の改正、昭和34年に、現在の商標法が施行されています。 特許庁の商標担当の審査官数は約150名となっています。
商標の審査は大きく2つの観点の審査があり、第1は独占使用に値する商標か?です。つまり、商品の機能やサービスの内容を表示する場合は、登録されません。第2は、すでに他人の似通った商標等があるか?という観点の審査です。この審査のためには既登録の商標と、先出願の商標の合計約200万件を対象として審査することになります。審査の仕方は、昭和50年代までは、審査対象商標となる数100件を衝立に並べ、既登録商標のカードをめくって審査していたそうです。昭和50年代から、コンピューターでの検索を徐々に導入し、平成11年頃からオンライン検索に移行したそうです。
ところで出願日が前後している場合は、早いもの勝ちなのですが、同一商標の同日出願の際、協議不成立となると、くじにより決めることとなっています。このくじですが、最初にじゃんけんでさいころを振る順番を決め、次に、さいころ2個を振って、目の数の合計の多い人が玉の色を決め、最後にガラポンで先に出た玉の色の人が勝ち商標権を得られるのだそうです。
明治からの歴史をみますと、登録可能な商標が大きく拡大致しました。その第1は、平成4年4月1日に施行されたサービスマースを登録可能とした改正です。リーガロイヤルホテルなど、ホテルや飲食業、運送業、建設業、通信業、美容業等多くの業種の社名や標識が商標として登録できることとなりました。
その後、立体商標についても平成9年4月1日から登録可能となり、登録立体商標の例としては、カーネル・サンダース立像や、コカコーラのボトルなどが有名ですが、そのほかにも多く登録されています。されに地域団体商標が平成18年4月1日から、登録され、小売商標については平成19年4月1日から登録開始です。
そして、最近では、音の商標、色彩のみの商標についても保護対象とすることが決まり、平成26年閣議決定まで進んでおり、次の国会通過予定となっています。
さらに今後可能性ある商標としては、位置の商標や、触感の商標、味覚の商標なども議論の対象となっています。
平面的商標のみが対象となっていた商標が、大きく変化を遂げているこの頃です。